都市化が進展し交通渋滞が激しくなるにつれ、短距離の移動については二輪車が好まれるようになってきています。カウンターポイント・リサーチ・エイチ・ケー(英文名:Counterpoint Research HK、以下カウンターポイント社)は、二輪車の動向をまとめたGlobal Two-wheeler Sales Trackerを発表いたしました。これによれば、二輪車販売は全体としては2023年に前年比1%以下の伸びでしたが、そんな中でインドは2024年中に中国を抜き、世界最大の二輪車市場になる見込みです。世界の二輪車市場は、中国、インド、インドネシア、ベトナム、フィリピンなどアジアの諸国を中心に動いています。今後は電動二輪車(E2W)セグメントが成長し、2024年に販売される二輪車の1/4を超える台数が電動化すると予想されます。

 

市場動向について、シニアアナリストのSoumen Mandal氏は次のようにコメントしています。

「経済成長、短距離の移動には二輪が好まれること、シェア型の移動手段として二輪の需要が高まっていること、があいまってインドが中国を抜く動きになっている。二輪車市場自体は成熟しつつあるが、電動化は大きく進むだろう。特に2025年以降に大きく伸びそうだ。東南アジア諸国とインドではE2Wが主流になり、他地域より電動化の進展が早そうだ。世界の二輪車市場全体におけるE2Wの電動化率は、2024年中に、四輪乗用車における電動化率の1.5倍になると予想されている。今のところ中国が台数ベースでは最大のE2W市場で、インドとベトナムが後に続いている。」

 

新興のE2Wで存在感を示すのがYadea、AIMA、TAILG、Sunra、Luyuanの各社で、合わせて2023年末には売上全体の70%を占めました。いずれも「EVファースト」を掲げて中国で企業した新興勢力で、そのことが中国のE2Wにおける中国の存在の大きさを示しています。また、トップ10社のうち、3社がインド企業のOla Electric、TVS Motor、Ather Energyで、E2W市場においてインドがプレゼンスを高めてきていることがわかります。OlaとAtherも「EVファースト」の新興企業で、既存の大手であるTVS、Hero、Bajajに挑んでいます。高級二輪車のセグメントでも新規参入が続いており、Ultraviolet、Revolt Motors、Energica Motor、Damon、ARC Vehicleなどが、既存大手のHarley Davidson、Enfield、Yamahaなどに戦いを挑んでいます。

 

出典:Counterpoint Global Two-wheeler Sales Tracker, July 2024

売上は卸値、つまり各メーカーの工場からの出荷時の金額です

 

Mandal氏はさらに次のように続けています。

「Honda、Yamaha、Bajaj、Hero、TVS、Haojue、Piaggioなどの従来の二輪車メーカーの様子は、従来の車メーカーの様子に酷似している。つまり、E2Wへの参入に慎重なのだ。しかし、彼らのR&D能力、生産と流通の規模、技術革新に対応した経験、強いブランド力、それに根強いファンの存在を考えれば、こうした従来の二輪車メーカーもE2W市場に事業を広げることで優位性を出せるかもしれない。とはいえ、E2Wエコシステムの新顔の企業と提携するのは、こうした従来メーカーにとっては難しい面もあるだろう。特に、マインドセットの違いやオペレーションの変革の面で、困難がありそうだ。」

 

世界の二輪車販売におけるE2Wのシェアは、2030年までに44%に達するとみられ、2024年から2030年までの累計E2W販売台数は1.5億台を超える見通しです。E2Wのバリューチェインは世界規模で立ち上がっていくでしょう。

 

この市場のデジタル化について、リサーチ担当バイスプレジデントのNeil Shah氏は次のようにコメントしています。

「四輪車の市場と同様に、二輪車の市場も、電動化の波に乗ってコネクティビティを重視するようになってきている。電動化によって、いつでもどこでもネットにつながり、必要なソフトやサービスにアクセスできるようになる。そのために今は4Gがあるし、将来は5G RedCapも使えるようになる。必然的に、二輪車は、演算能力、ソフトウェア、OSを組み合わせて、位置ベースのアプリケーションやサービスをライダーに提供する先進的なデジタル機器になっていく。これによって、二輪車市場のエコシステムに新たなプレイヤーがやってくる。チップセット、電池、その他の関連部品メーカーという面では、Qualcomm、MediaTek、Delta、CATL、Samsung SDIなどだ。インフラ提供の面では、Google、Amazon、Baidu、AWSがクラウドインフラを、またBlackBerryやGoogleがソフトウェアインフラを提供する。アプリケーションの面では、TomTom、HERE、MapMyIndia、Baidu、Spotifyなどがある。充電ステーションの面では、ChargePoint、Statiq、Tata Power、MamCharge、LV C-CHONG、VinFast、Ola、Ather、Electrify Amerikaがある。二輪車に使われる半導体の割合は、2030%までに15%を超える勢いだ。これは、今、四輪車市場に起きていることと似ている。将来は、AIを使った処理によって二輪車のデザインや性能を改良するための分析を行ったり、もっと賢く安全な運転を実現するような新機能や新サービスを提供したり、することになるだろう。」

 

包括的で詳細な内容を掲載したGlobal Two-Wheeler Sales Tracker, 2023と、Global Two-Wheeler Sales Forecast, 2022-2030とをreport.counterpointresearch.comでお求めいただけます。

最新調査や分析の内容に関するご質問は、お気軽にpress@counterpointresearch.comまでお寄せください。

 

 

【カウンターポイント社概要】

カウンターポイント社(英文名Counterpoint Research HK)はTMT(テクノロジー・メディア・通信)業界に特化した国際的な調査会社である。主要なテクノロジー企業や金融系の会社に、月報、個別プロジェクト、およびモバイルとハイテク市場についての詳細な分析を提供している。主なアナリストは業界のエキスパートで、平均13年以上の経験をハイテク業界で積んでいる。公式ウェブサイト: https://www.counterpointresearch.com/