ウェハー製造装置(WFE)で世界のトップ5社の売上は、2024年第1四半期に前年同期比9%減少しました。顧客の最先端半導体への投資が遅れていることがその原因です。それでも、DRAMの需要が高かったので、落ち込みはある程度カバーされました。トップ5社のなかでは、ASMLと東京エレクトロンは、前年同期比でそれぞれ21%と14%、売上が減少しました。一方、Applied Materials、Lam Research、LKAの売上は、2023年と比べ一桁台前半の下げ幅にとどまりました。

 

次に、前四半期との比較では、最先端プロセスノードの製造キャパシティを顧客が調整したことが影響して、ASMLの売上は26%減少したものの、KLAの売上は5%減にとどまっています。Applied MaterialsとLam Researchの売上は横ばいでした。一方で、東京エレクトロンは、DRAMとNANDフラッシュの需要の強さのおかげで、前四半期比18%の伸びとなっています。

 

WFEメーカートップ5社の中国における売上は、2024年第1四半期に前年同期比116%成長しました。これは、同国向けのDRAM出荷が伸びたためです。今年これ以降も、最先端以外のプロセスノードについてはIoT、自動車、5Gなど広いアプリケーションで需要が強い状態が続きそうです。

 

WFEメーカートップ5社のメモリーの売上は2024年第1四半期に前年同期比33%成長しました。NANDの消費が増えていることに加えて、AIの普及とともにDRAM需要が高まっているからです。ファウンダリ向けの売上は、最先端半導体への投資が遅れていることから、前年同期比29%落ち込みました。

 

出典:Wafer Fab Equipment Manufacturers: Q1 2024 Performance and 2024 Outlook

 

シニアアナリストのAshwath Rao氏は次のように述べています。

「2024年第1四半期は、メモリーの売上が著しく増加し、これはこの業界が底入れして2024年下半期に力強く回復するサインだ。短期的には市場の見通しが不透明なものの、回復基調は第2四半期も継続し、下半期には回復が加速するとみている。前四半期と比べて、第1四半期の受注は下がっているが、今後は堅調だろう。米国では助成金(訳注:米国内に建設される半導体工場に助成金を出している)があるし、線幅2nmのプロセスが2025年には立ち上がるからだ。その先にはAIがあって、AIに合わせて技術が進化し、半導体メーカーにとってAI対応は最優先事項になっている。PC、スマホ、サーバーへのAIの搭載が進むと、それが装置メーカーにとっても売上成長を促す。もっとも、そのための戦略投資が必要なので、それが2024年の利益率に多少の影響は出るだろう。いずれにせよ、こうして業界の状況が安定してくれば、2025年の力強い回復につながる。」

 

また、Rao氏は、中国市場について次のように述べています。

「2024年第1四半期に中国向けの売上が伸びたことで、他地域での売上減を埋め合わせたかたちだ。中国はDUV(深紫外線レーザー)の装置を主に買い、マルチパターニングなどの技術をうまく使って最先端プロセスノードを実現している。」中国の半導体メーカーの当面の重点目標は、国内での半導体製造能力を進化させ、外的要因や西側諸国の装置メーカーからの技術の独立を果たすことにあります。

 

2024年通年での売上は、2023年より4%伸びる予想です。一方、2025年は前年比二桁の伸びが期待されています。その理由は、最先端ノードを使うロジック半導体の製造能力増強、生成AIやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の伸び、そしてセットメーカーの事業回復によるチップの需要回復、です。

 

 

【カウンターポイント社概要】

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