- タイのスマホ市場は2023年に前年比2%伸びた。消費者心理が年末に向けて改善したことによる。
- 200米ドル(約3万円)未満の低価格帯は2023年に前年比17%伸びたが、その他の価格帯はすべて落ち込んだ。
- Samsungは、21%のシェアをもってスマホ市場をリードしているが、同社の出荷は4%減少した。
- 5Gスマホは、200米ドル未満の価格帯で、139%もの伸びを示した。
Counterpoint Researchが提供するAsia Monthly Smartphone Trackerによれば、タイのスマホ市場は2023年に前年比2%と若干成長した。他の東南アジア(SEA)市場が落ち込む中、タイは厳しかった2023年において多少なりとも成長した唯一の市場である。同国において低価格の値ごろなスマホの売れ行きが好調だったからである。
タイの経済状況について、シニアアナリストのGlen Cardoza氏は以下のようにコメントした。
「低価格セグメント(200米ドル、約3万円未満)のスマホは、タイ市場で目覚ましい改善をとげた。背景には先の見通せない経済状況がある。当初、タイでは、政情の不安定さと相変わらず冴えないままの経済状況から、消費者は大きな出費を控える傾向にあった。しかし、労働市場が回復の兆しをみせ、平均賃金が上昇すると、消費者は一息つくことができ、状況が変わった。結果としてスマホの需要が、特に価格に敏感な消費者の間で、高まったのである。」
出典:Counterpoint Research Southeast Asia Monthly Smartphone Tracker, February 2024
Samsungは、タイのスマホ市場において21%のシェアをもち、首位の座にある。しかし、出荷は2023年に前年比で4%減少した。同社はスマホの中位機種と高級機に重点を置いており、そのぶん低価格帯でシェアを落とす結果となった。Xiaomi、OPPO、vivo、realmeなどの中国メーカーは、その200米ドル未満の低価格帯に的を絞り、どのメーカーも一桁%の成長となった。
低価格帯が好調だったとはいいながら、出荷が最も伸びたのはAppleで、高級機カテゴリにもかかわらず前年比26%の成長となった。キャリア各社によれば、iPhoneの需要は年を通じて高く、15シリーズの発売以後台数はさらに伸びたという。
スマホの価格帯別に好不調が分かれた。200米ドル未満の低価格帯は2023年に前年比17%伸びたが、他の価格帯は落ち込んだ。また、この地域の他国と比べて、タイでは低価格帯の5G機種を受け入れる傾向が強い。
5Gの状況と、Appleのタイにおける成功について、Cardoza氏は以下のように述べた。
「5Gのシェアは、中位~高級スマホの出荷が低迷したことの影響を受けたが、それでも200米ドル未満のセグメントにおいて2023年に5Gスマホは139%も伸びた。これは、消費者にとって5Gの入手がいかに容易になったか、タイにおけるプリペイドやポストペイドの料金プランがいかに値ごろだったか、の表れである。キャリア各社によれば、下取りやパッケージ販売(訳注:端末販売と大容量通信プランや下取りの抱き合わせ)も次第に活発になっており、特にAppleのiPhoneで目立つという。iPhone 14と15はAISやTRUEなどのキャリア経由で、2023年によく売れた。」
さらに、Cardoza氏は、こう付け加えた。
「経済がさらに良くなれば、消費者は広い価格帯で買い換えを検討するだろうから、5Gスマホの出荷はタイでさらに伸びるだろう。200米ドル未満のセグメントは、他のセグメント以上に売れるので、この価格帯が今後の鍵を握っている。」
最新の調査や分析に関するお問い合わせは、お気軽にpress@counterpointresearch.comまでお寄せください。
Team Counterpoint
Counterpoint Researchは若く急成長中の調査会社で、ハイテク業界の分析を得意としている。カバーする領域は、コネクテッド機器、消費者向けデジタル製品、ソフトウェアとアプリケーション、および関連分野のトピックスである。当社の調査チームがまとめて発行するレポートに加え、要望に合わせてカスタマイズしたレポートも提供している。また、セミナーやワークショップを企業向けに開催して好評を得ており、依頼があれば実施している。特に高精度の調査を必要とするプロジェクト向けには、コンサルティングやカスタマイズした調査活動も実施する。