- 半導体ファウンダリ業界が正常化の兆しをみせている。前四半期比10%成長し、在庫正常化が進んでいることを示唆している。
- 2023年第4四半期もAI需要は強く、2024年も引き続き成長するであろう。
- PCもスマホも需要が安定したことをうけて、半導体の在庫はまもなく底をうつ。
Counterpoint Researchが提供するFoundry Servicesによれば、世界の半導体ファウンダリ業界の売上は、2023年第4四半期に前四半期比10%成長したものの、前年同期比では3.5%減少した。マクロ経済は不透明ではあるが、業界は2023年下半期に底をうった。スマホとPCセクターの需要で、サプライチェインで在庫を従来水準に積みます動きがあり、これが原動力となった。PCとスマホの両方で緊急の発注が発生しており、特にAndroidスマホのサプライチェインでこの傾向がある。
出処: Foundry Capacity Tracker Q1 2020- Q1 2024
TSMCが2023年第4四半期もファウンダリ業界のリーダーであり、61%の市場シェアを確保した。2023年第4四半期の売上は想定を超え、2023年第3四半期から59%もの伸びを達成した。TSMCの5nmラインはNVIDIAのAI用GPUの堅い需要をうけてフル稼働している。一方で、AppleのiPhone 15が最先端の3nmプロセスノードの需要を牽引している。このふたつが7nm以下のプロセスの売上を支え、TSMCのこの四半期における売上の70%を占めている。同社の技術の優位性を示すものである。
CounterpointのアナリストAdam Chang氏は以下のようにコメントした。
「AIの需要は2024年も強いだろう。TSMCのCoWoS(訳注:ダイを個別にパッケージに収めるのではなく、複数のダイを近接して並べてまとめてパッケージに封止することで、配線長を大きく削減する技術)の製造キャパシティが増強されることも要因だ。同時に、ファウンダリ市場は半導体在庫サイクルの底にほぼ到達している。TSMCにとってはAIのメガトレンドとロジック半導体の需要回復との両方が追い風になる。」
Samsung Foundryは、2023年第4四半期も14%のシェアをもって第2位を維持した。この四半期にスマホの在庫積み増しがあったことが効いた。Samsungのスマホ S24シリーズの予約が殺到し、Samsungの5/4nmプロセス製品からの売上に貢献した。
成熟したプロセスノードを扱うファウンダリの中では、GlobalDoundriesとUMCが予想を上回る業績をあげ、2023年第4四半期はどちらも6%のシェアを獲得した。しかし、両社ともに2024年第1四半期の予測値は低い。これは特に自動車や産業用において需要が弱い上に、顧客の在庫調整も進行中だからである。SMICは2023年第4四半期に5%のシェアを獲得した。HuaweiのKirinチップや中国版のCPU/GPUの需要に応えるため7/10/15nmラインの稼働率が高かった。SMICはTDDI(訳注:タッチコントロールとディスプレイの機能を統合したチップ)やCIS(CMOSイメージセンサー)をはじめとするスマホ関連部品について特急の注文が増えると予想しているが、年間の見通しには慎重である。これは需要が安定的か不透明だからで、成熟したノードを扱う他社の見通しとも合致する。
2023年は急減速したが、ファウンダリ業界は、在庫の正常化が継続するなか、2024年は成長軌道に戻ると予想している。AIへの需要が強いうえに、最終顧客の需要が回復していることが、この産業の2024年の成長を支えることになる。
Team Counterpoint
Counterpoint Researchは若く急成長中の調査会社で、ハイテク業界の分析を得意としている。カバーする領域は、コネクテッド機器、消費者向けデジタル製品、ソフトウェアとアプリケーション、および関連分野のトピックスである。当社の調査チームがまとめて発行するレポートに加え、要望に合わせてカスタマイズしたレポートも提供している。また、セミナーやワークショップを企業向けに開催して好評を得ており、依頼があれば実施している。特に高精度の調査を必要とするプロジェクト向けには、コンサルティングやカスタマイズした調査活動も実施する。